XRって結局なんなのか、ひたすら考えた答えをまとめてみた
最近XRについて考えることが多い。仕事で関連の開発をやったり、セミナーに行ったらしているのが主な理由なんだけれど、結局VRとかMRってなんなんだろう、といつも考えている。
そこで今日は、日頃考えているXRとは結局なんなのかという問いの答えを、現時点版で書いてみようと思う。まず最初に断っておくと、ぼくは専門家でもなんでもないので、技術的にはトンチンカンなことを書くかもしれないけれど、そこは一意見として差し引いて読んでもらいたい。
そもそもXRとは何か
XRとは、Cross RealityやExtended Realityの略称で、VR、AR、MRの総称を指す。要するに◯◯リアリティを全部まとめて、XRと呼んでいるというだけ。 ただそこで総称されているそれぞれの技術は、割と似て非なるものなので、注意が必要だと思う。
それぞれ2つの記事を読んで、VR、AR、MRについてまずは簡単にまとめておく。
VR(仮想現実:Virtual Reality)
仮想現実(VR)とは、コンピュータで生成される多感覚の体験を指す広義の用語である。シミュレーションで作り出された周囲の世界を体験し、その世界と相互作用することができる
VRは「Virtual Reality」の略語で、コンピュータ上に人工的な環境を作り出し、あたかも自分がその空間にいるかの様な感覚を体験できる技術で「人工現実感」あるいは「仮想現実」と呼ばれている。こちらは仮想世界への没入感が売り。Oculus RiftやHTC Vive, PlayStation VR(以下、「PSVR」)などハイエンドVR機器が主な製品。
どうも歴史的には19世紀の立体視装置までルーツを遡れるらしい。そこから1990年ごろにポップカルチャーで注目され、ゲームや映画でも取り上げられるようになったそうだ。現在では、Google、Microsoft、FacebookなどITの巨人たちが大がかりな投資をしている他、Oculus Goなど3万円ほどで買える廉価な機器が出たことで流行り始めている。
AR(拡張現実:Augumented Reality)
> VRが、完全に仮想的な環境にユーザーを没入させようとするのに対して、拡張現実(AR)はデジタルに作り出した知覚を重ね合わせることで現実世界を強化しようとする。
ARは「Augumented Reality」の略語で「拡張現実」とも訳されている。現実空間にバーチャルなオブジェクトを重ねて表示する技術の総称のことで、付加する情報が最も少ない。有名な例として『Pokémon GO』がある。スマホのカメラ越しの現実空間に、動くポケモンのデジタル画面を重ねて表示。あたかも現実とゲーム空間が折り重なったようにしたこのゲームは、多くのファンを魅了した。
こっちは1968年が初めてらしいが、商用では2008年。比較的最近の技術。身近な例だと、PokemonGoがあげられる。またリビングスタイルさんがやっている、家具系のARは最近流行ってきているらしく、引っ越しのときなどに大活躍している。
MR(複合現実:Mixed Reality)
複合現実(MR)はARの一種で、物体が現実世界と相互作用しているかのように、グラフィカルに映し出す技術である。
MRは、最も新しく生まれた言葉である。「Mixed Reality」の略語で、「複合現実」と呼ばれる。CGなどで作られた人工的な仮想世界に現実世界の情報を取り込み、「現実世界と仮想世界を融合させた世界」をつくる技術をいう。MRの特徴として、その世界の中では、仮想世界の事象と現実世界の事象が相互に影響する。米スタートアップのMagic leap社が開発し、デモ映像が話題になった。
こっちは最近の概念で、有名な機器はMicrosoft HoloLens。ぼくが以前シアトルに行っていたのはこの関連だった。 新しいこととHoloLens自体がめちゃくちゃ高性能な機械なこともあって、結構話題になっている。
さて、ここまでXRをそれぞれ簡単に確認したところで、それぞれについて考えていることをまとめてみたい。
VRとは結局なんなのか
VRは、仮想現実という言葉が表すとおり、「ここではないどこか」を創る技術だ。例えばVRゲームを起動すれば、あたかも自分が主人公かのような体験を味わうことができる。ちょうどこないだやっていた「レディ・プレイヤー1」という映画では、まさにVR世界オアシスでの物語だった。
この技術は、あくまで仮想の現実を創る技術と認識されているけれど、このまま進歩していくといわゆる「パラレルワールド」的な世界観を創ることができると思う。
正直今は、VRの解像度もまだ大したことない(少なくともOculusGOレベルでは)が、今後解像度が上がり、没入感が上がれば上がるほど、ぼくらは現実と仮想の区別がつかなくなるだろう。正確には、区別がつかなくなるというよりは、プライオリティに区分がなくなる。
今は現実に対して仮想は圧倒的に下位に存在しているが、例えばInstagramで写真をあげるときだけ化粧をする女性のように、現実世界ではなく仮想世界にこそリアルを見出すようになっていく。つまり文字通り「ここではないどこか」へ行けるようになるのだ。
結果、現実の価値が相対的に落ちていく。実際「レディ・プレイヤー1」では、世界中の人々が現実の問題から目を背け、仮想世界オアシスに生きがいを見出している。まあこのオアシスのような、現実以外の別世界ができるというよりは、恐らく複数の仮想世界が出来、それぞれが生きる現実を選べるような未来が想定されると思う。
まとめると、VR技術は現実を「パラレルワールド化」するような技術といえるんじゃないだろうか。
ARとMRは何が違うのか
次にAR、といきたいところだが、そもそも「ARとMRは何が違うのか」ということを考えておきたい。結論からいえば、MRというのはHoloLensを始めとした複合現実機器を売るために作られた概念で、本質的にARとMRは同じだ。
以前MoguraVRさんのイベントで、登壇していた方がこんな発表をしていた。ちょうど実況をしていたツイートがあるので掲載する。
AR/MRの技術は「認識」と「表示」に分けて整理すればわかりやすくなる
— 駆け出し眼鏡 (@taiko_megane) 2018年7月4日
「どのような認識技術を使って」「なにで表示するのか」の掛け算になる
認識=コンピュータがどうやって現実世界を認識するのか
表示=認識した世界に置いたAR/MRをどうやって人間に伝えるのか?#moguravr
認識義重として、難易度順に
— 駆け出し眼鏡 (@taiko_megane) 2018年7月4日
プリクラ型、マーカー、マーカレス、AR/MR MAPの4種類に大別できる#moguravr
つまりARもMRも、「どのような認識技術を使って」「なにで表示するのか」だけが技術としては重要である。またその認識はプリクラ型、マーカー、マーカレス、AR/MR MAPの4種類しかなく、AR/MR MAPを使うようなものをMR、それ以外をARと認識しておけばとりあえずいいと思う。
簡単にそれぞれ紹介しておく。
- プリクラ型:デバイス自体は認識をしておらず、画面に情報を貼り付けているだけ
- マーカー型:QRコードなどのポイントを指定して、そこが見えたら情報を出す
- マーカーレス型:カメラで移っている箇所をその場でマーカー化し、そこを起点に情報を出す
- AR/MR MAP型:事前にコンピュータが認識できる地図を作成し、端末のカメラ等センサにより、そのMAP内の位置を認識して情報を出す
というわけで、ARとMRがほぼ同じだと考えたうえで、その技術の本質はなんなのかを考えてみる。
MRとは結局なんなのか
MRやARは結局「現実に情報を付与する技術」といえる。 普段歩いている道にポケモンがいたり、なにもない部屋に家具を置いてみたり、空中にブラウザがあったり。これはVRとは根本的に違う概念だ。
このとき大きく2つ、ポイントがあると思う。一つは「そこに何かがある感覚が生まれること」、もう一つは「世界そのものがインタフェースとして機能すること」だ。
そこに何かがある感覚が生まれること
これは簡単で、現実に見えない情報が付与されていることが普通な感覚になってくると、見えないものが感じれるようになってくる。実際HoloLensの開発をしていると、他の人がHoloLensで何かしているのを見ているだけで、見ている方向になにかあるんだろうと感じ始める。これはPokemonGoでも起きていた現象で、公園に行けばここにジムがありそうだなとか、レアポケモンがいそうだなと「感じて」、スマホを取り出す。
世界そのものがインタフェースとして機能すること
もう一つは、まだ今は想像できないことだが、今のHoloLensのような技術がコンタクトや眼鏡レベルのサイズで利用できるようになったとき、ディスプレイなんてものはもう消失して、世界そのものがインタフェースとして機能するようになる、という話だ。
今ぼくらは日常的にパソコンや携帯を使い、ペンでメモを書いたりするわけだけれど、コンタクトレベルでMRが実現すれば、世界全体がメモ帳になるしディスプレイになる。気になったことがあれば、適当にウィンドウを取り出し、その辺にメモがとれる。
この全てがインタフェース化するというのはAR、MRの素晴らしい可能性だと思う。
まとめ
さて、かなり長くなってしまったが、今まで考えていたことをある程度整理できた。 今の技術ではあまり想像できないことを沢山書いたかもしれないし、ほとんど夢ものがたりかもしれない。もしかしたら技術的に今は不可能なこともあるかも。 ただ技術は、その機能や構造だけでなく、「それはなんなのか」ということを含めて考えられるべきだと思う。これからももっと考えていきたいし、議論していきたい。
それでは本日はここまで。最後までお付きあいいただきありがとうございました。